私の育った街はかなりのおませさんが揃っていたようで
幼稚園のときには恋愛話が通り、
好きな人がいないというと「うそつき」と言われるような集団の中にいた。
小学校の1年生のときにはクラス公認カップルが成立し、
3年生では5組ほどのカップルができ、その中の一組にいた。

小2まで比較的みじめな立場であった私が
髪を伸ばし始め、ようやく認められるようになった頃。
まだまだ自分を信じられなくて大嫌いで死にたいと思っていた、のに


はじめて わたしを すき だという。


そんな存在が表れた。


ものすごくびっくりしたし、嬉しかったし、揺れた。
彼は光だった。
サッカー部に入っていた彼を見るために、一番眺めのよい図書室が放課後の居場所だった。
夕焼けのまぶしいグラウンドで染まる小さな影。
どんなに人がいたって、どこにいたってすぐに分かった。
彼の背格好、歩き方、よくいる場所、癖になってるポーズ。
ぜんぶぜんぶ、知っていた。
10年以上たっている今でも思い出せる。それほどまでにまっすぐ見ていた。


わたしは すき をかえさなかった。


実質的に両思いという状態で、私たちは友達であり、一緒にいることを求めえる関係であり続けた。
私たちはあまりに幼かった。少なくとも彼は、半年以上生まれが違った。
私はわかっていたのだ。
彼が先に好きだと思ってくれたとはいえ、
彼の「好き」は私の「好き」よりもちいさい。
彼が大人になるのを待つのか。私が悲しみを抱えながら一緒にいるのか。
どれも決断できなかった。
まだ、全然弱かった。


だけど、そんな弱ささえ
いとおしく思えるほどに
私は切ない気持ちを抱えながら、段々にそっけなくなっていく彼と一緒にいて。
次第に一緒にいることも減っていって。気持ちだけは大事に抱え続けて。
まだ終っていない。
初々しさも、健気で弱い自分も、色褪せてしまっているけれど。

いま、君に会いたいと思うんだ。