あの子がそらめを名乗る前から
私にとってはソラだった。
薄い色素の目と髪で、さらさらと揺れるセミロング。
美しいかたちの手。日焼けして痛んだ肌でさえ、かえって危うい美しさがあった。

小学校からずっと腐れ縁の私たちは、修学旅行も一緒でその他もろもろ、宿泊する機会は常に同じところだったように思う。
中学生の修学旅行。
思春期にありがちな神経質な状態だった私は、誰かが少し動いただけで目が覚めてしまっていた。
夢遊病の気がある友人が、部屋の浴槽に入ってしまっている時、そらめが寝ながらむずがった。
頭と足が逆転していたので、なんの気なしに手元にあった手をとってしばらく握ってやった。
彼女はおとなしくなった。


当時流行っていたマイナスイオンのブレスレット、に時計がついたのを眺める。
3時…

眠れないな、と思った。
夢遊病の彼女はまだ帰ってこないのかな。


なつめ灯のオレンジ
波の音